犬に会った

会社で仕事をして、同僚と隣のビルの1階のご飯屋さんに行った。
ご飯を食べ終わって会社に戻ろうとしたら会社と同じビルに住んでいるお爺さんと犬が散歩していた。
この犬は「りく」という名前で、シーズーで、おとなしく、人懐っこい。
私と同僚はこの犬を「りくくん」と呼んでおり、お互い別々に会ったことがあった。
同僚がお爺さんに声をかけ、30分くらいお爺さんと話したり犬と触れ合ったりした。
その日は寒かったので、りくくんの首の暖かさが嬉しかった。
りくくんは犬よりも人間が好きだそうで、立っていると無言で見上げてくるのでついしゃがんで撫ででしまう。
そうこうしていると、近所の別の犬が、おばさんに、ドッグカー?(ベビーカー)のようなものに乗せられて通りかかり、私たちが可愛い可愛いと騒いだからか足を止めくれて立ち話に加わった。
この犬も犬より人間が好きだそうで、ずっと私たちに向かって身を乗り出し、吠えている。おとなしくて動きもゆっくりなりくくんとは全然違う。
けたたましく動き回って吠えているのだが、ほとんど声が出ておらず、「あれ?声が…」と言ったら、「この子、舌切られてて声が出ないの。繁殖犬だったのよ〜、7年前まで」とおばさんが教えてくれた。
こんなに細くて可愛いヨークシャーテリアにそんな暗い過去が、と思ったけれど
私は最近猫が飼いたくてしょっちゅう保護猫の情報を調べているので、自分にとって少しだけ身近な情報でもあった。
ずっと掠れ声で吠えて飛び跳ねているので怖かったが、噛まないかどうか飼い主のおばさんに確認したところ「私には甘噛みするけど外の人には噛まない」と言われたのでなでてみた。
撫でてみると吠えなくなったが、犬用の乳母車のようなところから出たくてたまらないようでずっと暴れているので、おばさんが出してくれた。
おばさんは趣味でこの乳母車を使っているのではなく、このヨークシャーテリアは外の地面が怖いようで普段は全然歩きたがらず、すぐに抱っこ抱っこ、となってしまうので使っているらしい。
それでも今日は、私と同僚という普段出会わない人間に会って気分がよくなって地面に出たがっているのだと聞き、仕事で疲弊していた私たちは強烈に癒やされた。
りくくんとヨークシャーテリアが地面に揃い、私たちが癒しと可愛いの波動に包まれながら犬を撫でていると、さらにもうひと組、犬の散歩が現れた。
その犬はプードルで、一瞬、犬の幼稚園のような状態になった。
プードルが去り、ヨークシャーテリアとおばさんも去り、お爺さんとりくくんと同僚と私だけになった。
同僚はおじいさんとの会話が楽しいのか気を遣っているのかわからないが「ミニストップのアイスクリームは高いけど美味いの?」などの質問に、ミニストップのウェブサイトを調べて見せたりして会話を広げていた。仕事が終わっていない私はそろそろ戻りたくなってしまい、戻るねと言った。
同僚が「りくくんはいつも何時ごろ散歩をしているんですか」と質問をすると、
「夕方と夜の10時と夜中の2時、1日3回だよ。この子家の中でおしっこしないから」と教えてくれた。
私は以前、まさに夜中の1~2時くらいに1人で会社に残っていた日の帰り時、はじめてりくくんに会った。
会社から出て(スマホか何か見ていたのか)立ち止まっていたら、急に膝裏を小突かれたのだ。びっくりして振り返るとシーズーが黙ってこっちを見上げていた。
その時も、この子外じゃないとおしっこしないから今から散歩、と教えてくれた。
私が思い出に浸ってボーッとしていると同僚が「じゃあそれくらいの時間にまたこの辺うろついてるようにします」的なことをお爺さんに言っていた。
徐々に解散の雰囲気になり、同僚は地下鉄に乗るため信号を渡り、私とお爺さんとりくくんは会社のあるビルに戻った。
おじいさんはビルの入り口のところでゴミを捨てたいということで、(りくくんのリードを)持って、といわれたので持った。
一瞬、犬を飼っている気分になった。
会社に戻って、1時間くらい作業をして帰った。
